ネット怪談の民族学を読んだ。 「くねくね」や「きさらぎ駅」などの2チャンネルのスレッドで話題になった怪談を民族学的に分析している本だった。
本の中で、様々なネット怪談の具体例を話の流れをスレのリアクションと共に説明されていて分かりやすかった。 ある話について、他の人も同じような体験があることや話を知っているというリアクションがあるのは興味深かった。 ただ、僕がネット怪談にあまり触れてこなかったからか、怪談の話はほとんど知らなかった。 どれか一つでも、話の流れや内容を知っていれば、「そんな話あったな〜」というような楽しみ方ができると思う。 これに加えて分析が加わるので、より内容を憶えていられるような気がした。
面白かったと思った点は二つある。 一つは、田舎の因習系のホラーコンテンツについては、偏見や差別があるという指摘がされているという点である。 最近はこのようなコンテンツは作られていないらしい。 この話は、暗黙的なバイアスが自分の中にあることを明らかにされて、はっとした。 加えて、民族学者が田舎に調査に行き、世間に公表することで、いわゆる遅れた文化が知らるようになった背景を知ると何とも言えない気持ちになった。
もう一つは、怪談が作られる過程を分析している所だ。 ある画像やテキストから、勝手に物語を追加してく過程が共通していた。 日本だけではなく、スレンダーマンなどの外国にも見られるというのが興味深かった。
虚の伽藍を読んだ。 いやー、面白かった。 400ページくらいあるが、一気に読んでしまった。
主人公は、日本仏教の最大宗派で働く僧侶の陵玄。 この僧侶が、京都の土地に関する書類が不足している所から話が始まる。 同時に京都闇社会と繋っていく。。。という内容の小説である。
第一部と第二部に分かれていて、一部では陵玄が組織の不正を暴き、出世する話だ。た。 二部では、宗派内の権力争いの様子が書かれている。
陵玄は、仏のためと言いながら、様々な悪事に手を染めていく様子にぞっとした。 二部の権力争いの内容としては、選挙の票集めの事だ。 この票集めの道中で、一部で繋った闇社会の人間を易々と切り捨てていく。 ほとんどの人が死んでいく様子を見ながら、ここまで人が変わるのかと思った。 選挙に陵玄は勝つのだが、選挙の一番のライバルである親友を自殺に追い込むのは見ていられなかった。 この一部と二部の陵玄の豹変っぷりが味わえてとても良かった。
よい対立・悪い対立を呼んだ。 よい対立は、健全な対立と呼ばれている。 本の中には以下のように書かれている。
自らを守り、互いを理解し合い、向上してくために欠かせないもの、それが健全な対立だ。
これに対して、悪い対立は不健全な対立と呼ばれ、本の中では以下のように書かれていた。
「善と悪」「わたしたちと彼ら」といった、相反する関係が明確になった時に起こるのが不健全な対立だ。
この二項対立的な構図は色々な所で見たことある気がした。
悪い対立に落ちてしまっても、よい対立に戻ることができるようになる事例が紹介されていて希望が持てた。 でも、これを実践するため、これまでの言説や行動を変える必要がある。 周りの人々は、突然の本人の変化を止めようと説得してきたりしてきていた。 二つの異なる事例で、同じような行動を周りの人が取っていて「なるほどなあ」となった。 本当に、よい対立に戻ることの難しさを感じた。
二項対立的に考えて、人にレッテルを貼る所があるので、気をつけていきたい。 そういう人に対して冷たく当たるのではなく、きちんと意見を交換できるような謙虚な姿勢を取れるようになりたい。 まずは、人の話をきちんと聞くことから始める。
イランの地下世界を読んだ。 イランで生活している著者が一般市民の生活の様子やイスラム社会を描いている。
中東情勢といえばきな臭い印象があるが、この本を読んで視点が変わった所か興味すら出てきた。 スカーフの話は面白かった。 ここで言うスカーフは、イスラム教の戒律において女性が身につけるための布である。 この布を公共の場で外すことで、イスラム社会やイラン政権などへの抵抗を示すこともできる。 それに対して、スカーフさえ着けてればイスラム社会で出世することができたりするらしい。 このような人達を著者は「イスラム・ヤクザ」と呼んでいて、面白かった。
スカーフを巡る話だけでも十分にイランやイスラム社会への興味が向けられて良かった。 他にも、イスラム教で禁止されている酒や肉の話などがあった。 イランが多民族であることが関係していて、世界は単純ではないということを改めて実感できた。
面白かった。
この本を読む前は、カウンセリングについて話を傾聴する程度の印象しかなかった。 序盤に、カウンセリングについての説明が以下のようにされている。
カウンセリングとは、心の問題に苦しんでいる人に対して、心理的に理解して、それに即して必要な心理学的介入を行う専門的な営みである。
この文章が、本文中にあるカウンセリングの具体例や、説明を通してとてもよく理解できた気がする。 特に四章の冒険としてのカウンセリングのエピソードは、カウンセリングに専門知識が必要であることが実感できた。
心の変化に二種類あると捉えているのは視点だった。 科学的な変化と文学的な変化の両方がある。 科学的な変化とは脳内物質の変化による心の変化、文学的な変化とは、過去に意味付けを行い物語ることで今を認識する事を通して心を変化させる。 科学的な変化は直感的に受け入れることができたけど、今でも文学的な変化について腹落ちして理解できているかは怪しい。 この変化を小説では描いているのでは?というような気もしてきて、色んな発見がある本だった。
イン・ザ・プールを読んだ。 奥田英朗さんによる作品で、精神科医伊良部シリーズの最初の話。 この医者が変わった病気を持つ人達を治療するかもしれないし、しないかもしれない話だ。
全部で五つの短編が集録されていて、読みやすかった。 集録されているのは以下の五編。
フレンズが一番のお気に入りの作品。 携帯依存症の高校生の話で、その高校生は日々頑張って友達関係を維持している。 この友情関係の維持のしかたが、とてもいたたまれない様子で、自分に刺さった。 こういう時期ってあるよな〜って感情移入できた。
全体的に明確に解決しているとは書かれていないが、ネガティブな終わり方もしていなくて、読後感はとても良かった。
映画化されているらしい。
コンゴで行われているコバルト採掘の現場を取材したノンフィクションだった。 様々なIT企業がコバルトのサプライチェーンの健全さをアピールしているが、実態はそうなっていない。 低賃金で長時間、危険な環境で採掘の現場で搾取されている労働者が居る。 採掘時に入るトンネル内の環境が良くない事に加え、崩落して生き埋めになる可能性もある。 加えて、ウランなどの危険な鉱物が含まれている可能性がある。 これだけではなく、鉱石を洗うことで生活に使用する河川が汚れることや、児童労働の問題などがある。
この本は、普段使っているスマホやPCがコンゴ人の命の上に存在しているという事実を突きつけてきた。 今となっては、手放すことができない製品だから、この搾取に加担していると言っても過言ではないと思った。 本の中でも指摘されているが、サプライチェーンの上流に居る自分にとってとても都合が悪い。 特に、この問題が解決した時に今のスマホの値段が上がるのかなあとか考えた時の気分は最悪だった。
現在のコンゴ政府では、汚職撤廃キャンペーンが行われているらしい。 これに期待したい。
嫉妬という感情を巡る議論についての本だった。 とりわけ、嫉妬が類似している者同士の間に生じるものという指摘はとても分かるなあと思った。
妬まれないための戦略に、ロゴがデザインに組み込まれているハイブランドが嫌いである理由が言語化されている気がした。 戦略として、「隠蔽」「否認」「賄賂」「共有」という4つの戦略が挙げられていた。 この中の隠蔽については、妬みの対象となるものを隠す行動を指す。 ロゴが入っていることにより、隠蔽という戦略が無効になり、妬みが想起されてしまう。 これまでは上手く言語かできていなかったけど、上手く言語化されていて、腑に落ちた。
これまでの思想家が嫉妬についてどのように論じてきたかもまとめられていた。 会話の0.2秒を言語学するという本で、著者が哲学について、当たり前のことに理屈っぽく取り組んでいる様を面白がると良いとあった。 この本自体ぶ厚くないから、この面白さをを味わうのにとても良かった。