面白かった。
この本を読む前は、カウンセリングについて話を傾聴する程度の印象しかなかった。 序盤に、カウンセリングについての説明が以下のようにされている。
カウンセリングとは、心の問題に苦しんでいる人に対して、心理的に理解して、それに即して必要な心理学的介入を行う専門的な営みである。
この文章が、本文中にあるカウンセリングの具体例や、説明を通してとてもよく理解できた気がする。 特に四章の冒険としてのカウンセリングのエピソードは、カウンセリングに専門知識が必要であることが実感できた。
心の変化に二種類あると捉えているのは視点だった。 科学的な変化と文学的な変化の両方がある。 科学的な変化とは脳内物質の変化による心の変化、文学的な変化とは、過去に意味付けを行い物語ることで今を認識する事を通して心を変化させる。 科学的な変化は直感的に受け入れることができたけど、今でも文学的な変化について腹落ちして理解できているかは怪しい。 この変化を小説では描いているのでは?というような気もしてきて、色んな発見がある本だった。
イン・ザ・プールを読んだ。 奥田英朗さんによる作品で、精神科医伊良部シリーズの最初の話。 この医者が変わった病気を持つ人達を治療するかもしれないし、しないかもしれない話だ。
全部で五つの短編が集録されていて、読みやすかった。 集録されているのは以下の五編。
フレンズが一番のお気に入りの作品。 携帯依存症の高校生の話で、その高校生は日々頑張って友達関係を維持している。 この友情関係の維持のしかたが、とてもいたたまれない様子で、自分に刺さった。 こういう時期ってあるよな〜って感情移入できた。
全体的に明確に解決しているとは書かれていないが、ネガティブな終わり方もしていなくて、読後感はとても良かった。
映画化されているらしい。
コンゴで行われているコバルト採掘の現場を取材したノンフィクションだった。 様々なIT企業がコバルトのサプライチェーンの健全さをアピールしているが、実態はそうなっていない。 低賃金で長時間、危険な環境で採掘の現場で搾取されている労働者が居る。 採掘時に入るトンネル内の環境が良くない事に加え、崩落して生き埋めになる可能性もある。 加えて、ウランなどの危険な鉱物が含まれている可能性がある。 これだけではなく、鉱石を洗うことで生活に使用する河川が汚れることや、児童労働の問題などがある。
この本は、普段使っているスマホやPCがコンゴ人の命の上に存在しているという事実を突きつけてきた。 今となっては、手放すことができない製品だから、この搾取に加担していると言っても過言ではないと思った。 本の中でも指摘されているが、サプライチェーンの上流に居る自分にとってとても都合が悪い。 特に、この問題が解決した時に今のスマホの値段が上がるのかなあとか考えた時の気分は最悪だった。
現在のコンゴ政府では、汚職撤廃キャンペーンが行われているらしい。 これに期待したい。
嫉妬という感情を巡る議論についての本だった。 とりわけ、嫉妬が類似している者同士の間に生じるものという指摘はとても分かるなあと思った。
妬まれないための戦略に、ロゴがデザインに組み込まれているハイブランドが嫌いである理由が言語化されている気がした。 戦略として、「隠蔽」「否認」「賄賂」「共有」という4つの戦略が挙げられていた。 この中の隠蔽については、妬みの対象となるものを隠す行動を指す。 ロゴが入っていることにより、隠蔽という戦略が無効になり、妬みが想起されてしまう。 これまでは上手く言語かできていなかったけど、上手く言語化されていて、腑に落ちた。
これまでの思想家が嫉妬についてどのように論じてきたかもまとめられていた。 会話の0.2秒を言語学するという本で、著者が哲学について、当たり前のことに理屈っぽく取り組んでいる様を面白がると良いとあった。 この本自体ぶ厚くないから、この面白さをを味わうのにとても良かった。